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虫歯は、口の中にいる細菌が、食事の中に含まれている糖分(ショ糖)を餌にして作りだした酸によって歯に穴があく病気です。虫歯菌はほとんどの人の口の中にいるような細菌ですが。口の中で増やさないようにすること、酸をつくりにくいような生活習慣をすることで、十分予防のできる病気です。通常は痛みなどの症状はありませんが、進行すると痛みが出るだけでなく、歯の内部の神経にまで影響が及ぶと、耐えがたい痛みの原因になったり、全身に細菌が回ってしまうこともあります。余談ですが歴史上の人物、新撰組の永倉新八さんは虫歯の穴から全身に虫歯菌が回ってしまい最後は敗血症で亡くなったと言われています。
通常、口の中には様々な種類の細菌が数多く住んでいます。この中にはむし歯や歯周病の病原菌も含まれています。特に虫歯の病原菌としては、ミュータンス菌といわれるものがよく知られています。
このミュータンス菌は、私達が食事やおやつなどで摂取する食べ物や飲み物に含まれる糖分を栄養にして増殖し、その際に菌の周囲にネバネバのグルカンというノリのような物質を放出します。これによって歯に強力に付着して、そこでたくさんの細菌の集合体が形成されます。これが増えて歯の表面の白い汚れとなったものが、プラークというものです。このミュータンス菌、生まれたばかりの赤ちゃんにはいないと言われています。生まれた後、お父さん、お母さんの口から感染すると言われています。
また、この細菌は同時に乳酸も作り出します。そうするとプラークの中は酸性になり、接触している歯の表面のエナメル質は酸によって溶けてしまいます。この現象を脱灰といいます。この歯が溶ける状態がずっと続くと、ついには穴があいてしまって、いわゆる「虫歯」ができてしまいます。こうなると、歯を削って治療する必要があります。歯に穴が開いた状態でもあまり痛みを感じることはありません。そのまま放置すると、さらに歯の内部にまでむし歯は進行して、エナメル質よりも酸に弱い象牙質も壊れていきます。この時にも痛みを感じないことが多く、放置すると、その中にある歯髄という歯の神経や血管のある部分にまで細菌が侵入します。こうなると耐えがたい痛みが出たり、神経が死んでしまって中で細菌が繁殖し、ついには歯の根っこの先端部分のあごの骨の中に細菌の巣をつくるようになります。あごの骨の中で炎症がひどくなると、顔全体が大きく腫れあがるようなこともありますし、熱が出たり、全身にも悪い影響が出ることがあります。
歯に穴があくむし歯になるまでの初期の状態では、表面で歯の成分のアパタイト結晶が少し崩れたような状態になります。通常エナメル質は透明感のある白い色をしていますが、結晶が崩れたような状態では不透明な白い色に見えます。この状態を初期むし歯といいます。この段階でしたら、歯を削ることなく、崩れた結晶の部分を回復させて元の状態に戻すことも可能です。このように失われたミネラル成分を取り込んで回復することを再石灰化といいます。再石灰化が可能な虫歯であれば治療は必要ありません。
虫歯のできやすいところは、プラークのつきやすいところ、とりにくいところです。特に若年者では、奥歯のしわや溝などのへこみのあるところ、歯の根元で歯肉に近いところ、そして歯と歯の間です。成人や高齢者では、むし歯治療をした歯の詰めた材料と歯の境界付近で、これは二次う蝕(むし歯)と言います。さらに歯肉が少しずつ減ってきて、歯の根っこが出てくると、表面はエナメル質よりも酸に溶けやすい象牙質が露出するので、この部分もむし歯になりやすいところです。
特に二次むし歯や歯の根っこのむし歯などは見えにくいところです。さらに多くの場合、かなり進行するまで痛みなどの症状もありません。定期チェックで歯医者さんを受診して初めてむし歯に気付くということも少なくありません。
人によって口の中にいる細菌の種類は異なりますが、ほとんどの人の口にはむし歯菌が含まれています。このむし歯菌が多くなるような人、そしてむし歯菌が活発に活動しやすいような生活習慣の人はむし歯に罹りやすくなります。すなわち、歯みがきと食生活とが大きく影響するのです。むし歯ができやすい人は、プラークをうまく除去できない人、そしてプラーク中の細菌の栄養である糖分を頻繁に摂取する人です。つまり、プラークがついたままだと、細菌は増えるばかりで、酸によって歯が溶ける時間が長くなってしまいます。また、頻繁におやつや間食を摂る人は、プラーク中の細菌の活動が盛んになり、酸も多くつくられてしまいます。
全身的な病気によって唾液の量が少なくなることもあります。唾液は、口の中の細菌を洗い流したり、酸を洗い流したり薄めるのにとても重要な役割を果たしています。したがって唾液の出る量が少ない人は、むし歯ができやすく、その進行はとても速いのが一般的です。初期のむし歯では、唾液中からカルシウムやリンなどの歯を形作っている成分が取り込まれて、再石灰化という現象が起きています。このように唾液は、細菌を減らしたり酸の影響を少なくすることに加えて、歯の再石灰化を促進するという役割もあり、むし歯の進行と大きく関わっています。
虫歯の治療は基本的に虫歯の穴にプラスチック、金属、セラミックのどれかを詰めることになります。また虫歯の範囲が大きい時は大型の被せ物を歯に被せます。つまり虫歯の場所や大きさによって治療方法が変わってきます。
プラスチックをコンポジットレジンといいます。比較的強度が強く、歯の色と近いので綺麗に治る、また金属やセラミックの治療と比べると歯を削る量が少なくて済むといった特徴があり、また保険診療となるので概ね1本の治療で1000円ほどとなります。しかし歯と歯の間や深いところにある虫歯、噛み合わせが強い方、ワインやカレーライスなど色の濃いものを好む方などは、割れてしまったり、ワインなどの色が着色するなどのデメリットがあります。
ほぼどのような虫歯にも対応することができる保険適応の治療方法で、金属の大きさによりますが概ね数千円の治療費です。しかし金属のため審美性に乏しく、金属に対してアレルギーを発症したり、すでに金属アレルギーをお持ちの方にはできないなどのデメリットもあります。また稀にすでに装着している金属と触れることで痛み(ガルバニー電流)を生じることがあります。
白いガラス様の詰め物で天然の歯と同様の色彩で最も審美的な治療です。また強度も強く良く噛めるという特徴もあります。しかし保険適応外の治療でかつ金属やプラスチックの治療と比べると歯を削る量が多いというデメリットがあります。
昔なら金属でしか治せないような部分の虫歯もお口の中の状況によっては比較的強度が強い白い詰め物で治すことができるようになちました。保険適応の治療になるため、セラミックの治療より安価となりますがやははりセラミックよりかは壊れてしまうことが多いようです。
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